札幌医科大学 病理学第二講座
学生のみなさまへ
まず,はじめに,私たちのホームページに来てくれてありがとうございます.
少し唐突ですが,みなさんに質問です.解剖学をはじめとする基礎医学中の基礎を終え,病理学を学んだ印象や,病理実習を終えた感想は,いかがですか?少し,振り返ってみてください.あるいは,病理学を始める前の学生もいるかもしれません.
The other side of the coin
(PenAStoryより引用)
まずは,病理学講義で,訳のわからない難しい漢字が嫌いだった君.病理実習で,顕微鏡をみることがとても退屈だった君.ぜひ,諸君に伝えたい.
病理は,顕微鏡をみて,病気の診断をすることが出発点です.しかし,それは病理学の片面なのです.病理学は,基礎医学と臨床医学の境界領域に位置し,さまざまな病気について,形態(かたち)や遺伝子レベルで,病気の発生メカニズムを解明する学問です.
病理学(ここ)では,講義で学んだ病理とは別の側面
~ the other side of the coin ~
を追求します
基礎医学では,患者さんから,「ありがとう」や,「お世話になりました」といわれることは絶対にありません.むしろ,基礎医学である病理学の役割は,病気の原因や成り立ちを解明に,これを軸足として,病気が発症し,進展するメカニズムを解明します.
したがって,この世界の住人は,病理組織標本を診て,小山内分類の3B型とか,オサナイカテゴリーIIa相当のように診断することは,あまり重要視していません.誤解のないようにいえば,否定するつもりは毛頭ないし,そのつもりもありません.むしろ,私たちは,その概念を作る側に立ちたいのです.
病気を理解しましょう
病理の基本は,病(やまい)の理(ことわり),すなわち,病気を理解することです.
一見,病理学には,二つの流れがあります.一つは,基礎研究を主体に,病気そのものを理解しようとする流れ,すなわち,私たちの立場です.一方は,正確な病理組織診断を志し,実践的医療に貢献しようとする流れです.
前者の基礎病理と,後者の臨床(外科)病理は,両者ともに重要な医学の一分野であることに議論の余地はありません.また,組織の詳細な顕微鏡観察が,もっとも確実で,かつ,経済的な疾病診断法であることに疑いはありません.
しかし,病理学とは,「病因を探求する学問」と定義するべきです.したがって,その概念は,広く自由なものなのです.この意味において,私は,即実践的な制約をもたぬ基礎病理が,病理学の本流と考えています.
まずは,始めましょう
1年生や2年生の病理を始める前の学生さん,2年生や3年生の病理を始めた学生さん,病理の試験をパスした4年生以上のみなさんへ.個人で,感じ方や考え方の違いは,当然あるし,あるべきだと思っています.
そのなかで,必ずしも病理に興味がある必要はありません.まずは,教室に来てください.私たちのドアーは,いつもオープンです.
そして,少しでも,病理に興味のある諸君.あるいは,病理に興味はないけど,将来は留学をしたいので英語を勉強したい学生諸君.まずは,始めましょう.
1.ロビンスを読む会
毎週火曜日,朝8時から,基礎医学研究棟11階の会議室で行っています.冷やかし大歓迎.出席自由,途中退席自由,居眠り自由,欠席自由,すべて,学生のみなさんが決めることができる緩~い会です.
2.抄読会
海外の学術雑誌をランダムに選んで,みなさんと読む会です.現在,定期的に行っていませんが,有志がいれば,いつでも対応します.
3.組織標本を読む会
実際の患者さんから取られた標本を診て,みなさんといっしょに考える会です.この会も,現在,一時中断しています.希望する学生がいれば,いつでも,開始できる体制にあるので,お互いに相談しましょう.
そもそも,病理2ってなにをやっているの?
いつでも,紹介します.興味ある学生さんは,直接来てください.
最後に
私たち基礎研究者は,現時点で,未知数で,いまだ日の目をみない(一見,地味な)研究を,(しかし)地道に行っています.基礎研究より得られた研究成果は,いますぐに役に立ちません.
しかし,将来的に,病態理解における古い医学のパラダイムを転換し,新しい医学,あるいは,医療の展開に直結するものと確信しています.
私たちには,若い君たちの情熱とエネルギーが必要なのです
今日,その一歩を踏み出しましょう